それではお待ちかね。攻殻機動隊のあの人に訊きたい。  Part I は、音楽を担当された川井憲次さんです。川井憲次さんていうとね、ま、こ の押井監督作品には欠かせない音楽家である。それからあと、一度聞いたら忘れら れないメロディは印象的だよね。今回ね、この川井憲次さんにインタビューを行な うにあたって、実は NIFTY Serve を使って質問事項を募集したのよ。うん。それで は早速質問に移ってみたいと思います。


押井監督の作品に曲をつけるにあたって、気を使う点は。

 監督の作品は、基本的には気をつける所っていうのは、無いといえば無いの です。というか、押井さんにいろいろとこういう風にしたい、ああいう風に したい、と云われるんで、それに即した格好で作ってくことですね。押井さ んの好みはあるんですけど。それは例えばこの楽器は嫌いだとか、そういう 趣味の部分では、気をつけてますけど、でもそれも使っちゃったりしますけ どね。

今回作るにあたってイメージしたものは。

 気をつけたっていうか、イメージしたものは、まずどこの国だかわからない、 アジアの音楽というものを気をつけました。それでアジアの音楽といっても、 たとえばインドネシアの曲ですとか、タイの音楽だとか、そういう風に国を 限定しない格好でできたらいいなと思って、ま、ただ根底には、押井さんの 方からも、太鼓でいこうということを云われてましたんで、まず太鼓があり きってとこでしょうか。

主旋律の無い曲が多いように思われますが。

 使ってた楽器がですねぇ、太鼓と、まぁあの例のアラマイバって云ってる歌 を除いては、タイのゴングとインドネシアのグンデルですね、を使ってたん ですけど、もともと音程が普通の12音階じゃないんですよね。ですから、も しも主旋律を入れようとすると、そこの国の音楽になってしまう恐れがあっ たんですね。それで、あのアラマイバって云ってるものの以外では、戦闘シー ンの所とか、そのくらいしか主旋律っていうのは明解には出てこないと思い ます。

シーンやキャラクターによって、楽器を使い分けたりしたのでしょうか。

 一応そのつもりでした。ただ、基本的には素子の心情とかそっちの方ばっか りの曲が多いので。だから基本的には人形使いのテーマというのはありまし たけど、それがゴングでやってみたところですね。

主題になっている曲・歌は、これ何語なんでしょうか。それで、どんな意味 があるんでしょうか。

これは日本語です。ただ聴いただけだと何を云っているのかさっぱりわから ないと思うんですけど。古い大和言葉的な日本語を使っています。特に何か の詩を持ってきたってんじゃなくて、ちょっと図書館に通いまして、万葉集 とかいろいろとみましてね、で、こういう詩を作ったんですが。内容的には、 映画の−−押井さんからは映画の内容にぴったりだって云われて、お褒めい ただいたんで、非常に嬉しかったんですけど−−結婚式の歌ですね。なんか チケットにビデオがついているやつも発売されているらしいんですよね。そ れには、ぴったり歌詞がのっかってましたけど。

音楽の世界にもコンピュータが無くてはならなくなっていますが、そんな状 況を、どう考えますか。

 ほとんどコンピュータと自分というのは考えたことがないです。今回の場 合なんか特に、逆にコンピュータ、ほとんど使ってないっていう状況なんで すね。ですから、もう非常にアナログ的な作り方っていうか。例えば太鼓の 音にしても全部手打ちで叩いてますし、あとメロゥなんかも無理矢理手で弾 いちゃったものも多いですし、あと歌ですからねぇ。まぁ自分の仕事の中で は、コンピュータっていうのは僕は使ってないっていうか、シーケンサーっ ていうものを使っているんですけれど、まぁあんまりこだわってはいないっ ていうか、たぶんこれからも変わらないだろうなって思いますね。生のもの も多いですしね。

この先音楽はどうなっていくでしょうか。

 コンピュータを使った音楽がやっぱり流行ってくるようですけども、やっぱ りその楽器の持ち味っていうか色気の部分ですね、それがどうしてもやっぱ り生にはかなわないなっていう風に思っています。ただこれから時代が進む につれて、段々実は作曲家が苦しくなってくるでしょうね。メロディの数に は限界がありますから、どうしても何をやっても盗作っぽくなってしまうと か、という難しさはあると思います。ただ最終的に生き残るのは、やっぱり メロディだけじゃないでしょうか。ただそのメロディを如何に差が出るかっ ていうのは、それはコンピュータがいい場合もありますし、あるいはその楽 器の特性を活かした、楽器の色気でやったりする場合もあると思います。だ からちょっと一概に、これから全部コンピュータになるとか、生でいくとか、 そういうことは断定はできないとは思いますが。
どうもありがとうございました。
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