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まとめ

この実験では大気と陸上生物圏の炭素量の合計を現在の値( 大気に 750 PgC(25%), 植物体に 610 PgC(21%), 土壌に 1580 PgC(54%), 合計 2940 PgC で固定し て行なったが、平衡状態に達した時には、 大気に 650 PgC(22%), 植物体に 1040 PgC(35%), 土壌に 1250 PgC(43%) という割り振りとなった。大気 CO2 の減少と植物体の増加は生物圏が炭素のシンク となっていることを明確に表しており、土壌有機物の減少は、逆に現在土壌が炭 素のシンクとなっていることを示しており、炭素のバッファの役割を演じている ように思われる。

また 松岡譲 (1996) によると 1860 年から 1989 年の間に 放出された化石燃料は 213.0 PgC であるので、大気と陸上生物圏の炭素量の合 計を上記の条件から 213.0 PgC 減らしてシミュレーションを行なった結果、大 気に 617 PgC(23%), 植物体に 968 PgC(35%), 土壌に 1142 PgC(42%) とほぼ 同じ割り振りとなり、その時の平均大気 CO2 濃度は 287 ppmv と産業革命以前 の大気 CO2 濃度に近い値となった。

これらのことから、大気 CO2 濃度は陸上生物圏の生産力と相互依存関係にあ り、合計炭素量と潜在植生より産業革命以前の大気 CO2 濃度をこの海洋を含ま ないモデルが推測できたことから、産業革命以前に陸上生物圏の生産力が大気 CO2 濃度の安定化に大きく関与していたことが示唆される。



Yoshihiko OHTA
1998年1月21日